ジ　エンド　オブ　900円

うちの家の近くには、亀田製菓の菓子を主に販売している自動販売機がある。

100円で一袋の菓子。
コンビニ等で買うと80円くらいじゃないの？ってものばかりだが、家にたいして食べ物がないとき、つまみ程度に1袋買って帰るのもオツなものである。

この日、後輩にジュースをおごっていたのもあって、サイフに100円玉がなかった。
「しゃあない、1000円で買うか。」
一応、釣り切れサインが点灯していないことくらいは確認する。

1000円を入れる。
商品を買うためのボタンが全て点灯した。

というのも…
この自動販売機、スパイラルになった針金に商品が挟んであるのが見え、選択した番号の針金が一周すると、商品が前に押し出されて落ちる仕組みである。
結構、商品が入っていない針金もあったりするのだが、その場所の番号の商品ボタンも点灯するので、
「間違って押したら、悲惨だろうな…ただ針金が回るのを見せられて、商品は落ちてこないのだから」
そんなことを考えながら、慎重に商品のボタンを押すのだ。

この後に起こる、恐ろしい事態など想像もつかずに。

無事、揚げ煎餅ゲット☆
…しかし
「釣りが出ない…？」
光る残り金額900円の文字と
相変わらず全部のボタンが「買って下さい」と訴える赤色の丸が光っている。

「がめつい自動販売機だな」
つり銭戻しのレバーを右に捻る。
効かない。
「ちっ」
もっと強くレバーを捻ると、自動販売機に異変が起こった。

全ボタンに「売切れ」の文字。
「売切れ表記する機能があるんなら、売り切れてる商品に使えよ！！何、今さら、ついてるの？しかも売り切れてないし！商品入ってるの見えてるし！」

そしてなぜか、お釣りの900円が返ってこない。
レバーを捻っても、黙ったままの自動販売機。

残り900円分のお菓子を買い占めれば、まだ気も晴れるというものの、「売切れ」ランプじゃ、どうしようもない。

俺は1000円の価値になってしまった、揚げ煎餅を持って、自動販売機に貼ってあるシールの問い合わせ先に連絡しようと試みた。

〜携帯からこのフリーダイヤル、通じません〜
何のための電話番号ですか？？？

呆然と自動販売機を見つめていると、1000円札を入れる場所の横に地味な赤いランプがついている。
小さい文字で注意書き。
「このランプがついてる時はお札はご利用にならないで下さい」
ちなみに、つり銭切れランプは今も点灯していないのであるが…
まったく不親切な自動販売機だ。

客にこの地味ランプを確認しろと？
そして、ちょっと札にシワがあるだけで「偽札疑惑排出機能」を発動させるくせに、今回ばっかりは丁寧に1000円飲み込んで、商品1つ渡してから…
「最初から使うなって言ってるじゃん？」
みたいな態度…？
やたらとムカツキました。

わずか数枚の煎餅に1000円かけるハメに陥った俺は、それを寂しくかじりながら、
「後輩にジュース、おごるんじゃなかった」
なんて思った。